慰霊碑「石の記念堂」がグッドデザイン賞を受賞

昨年完成した「桜の森の祈りと供養の標(しるべ)」がグッドデザイン賞を受賞しました。
慰霊碑「石の祈念堂」
2015 グッドデザイン賞
分類タグ
公共空間/土木/景観
受賞企業
一般社団法人てあわせ / 小石川建築/小石川土木 / 東京大学 生産技術研究所 川添研究室
事業主体名
一般社団法人てあわせ
受賞番号
15G101012
受賞概要
2015年度グッドデザイン受賞概要
受賞対象の詳細
「石の祈念堂」は宮城県石巻市の山腹に東日本震災による死者・行方不明者1万8千人に対し慰霊と祈念ができる場所として建造した。積層した玄昌石の数が被害者数を表しており、訪れた人々が被害にあわれた方一人一人に対して、そして東日本全域に対して個々に想いをめぐらすことのできる場所とした。また石巻の特産である石と鏡面ステンレスからできた祈念堂自体が、被害の大きかった東北各地の方角と地域を指し示す形状となっており、この場所に立つと自然に甚大な被害のあった方角へ手を合わせ祈れるようにと考えた。一人一人への、また東日本全域への祈念、そして大震災の事実と記憶を遠い後世に残すという想いを積層した石空間に託している。
プロデューサー
小石川建築/小石川土木 石川典貴、小引寛也+東京大学 生産技術研究所 准教授 川添善行
ディレクター
小石川建築/小石川土木 石川典貴、小引寛也+東京大学 生産技術研究所 准教授 川添善行
デザイナー
小石川建築/小石川土木 石川典貴、小引寛也+東京大学 生産技術研究所 准教授 川添善行
利用開始
2014/12/21
設置場所
宮城県石巻市皿貝字寺入山4
背景
震災後に石巻の山に計画された「鎮魂の桜の森」の中にこの石の祈念堂はある。鎮魂の桜の森とは震災の記憶と被害を後世に伝えるために桜の木を山に植樹し、散策路を設け公園として開放していく計画である。震災後において慰霊や祈念をする場所がなく、また遠い未来に震災や被害の大きさを伝えていくことが難しいなかで、主な財源を寄付金として誰でも簡単に行きやすい場所である鎮魂の桜の森内に設けることとなった。
経緯とその成果
大震災の被害の大きさを未来に伝える形状で地域の材料特性を十分に活かし、慰霊と祈念を行える場所の創出
デザイナーの想い
大震災直後の発案から3年程度が経ち、関係者の中でも震災に対する興味が薄れつつあることを不安に感じている状況で何とか実現できた。亡くなられた方や未だ見つからない方、また直接の知人でなくとも被害にあわれた方の場所に関係なく、誰でも慰霊と祈ることができる場所をつくることができた。また地域の中にもまだ残っている玄昌石を再利用することで、その土地の風景を感じながらも新しい空間体験ができると考えた。
企画・開発の意義
「石の祈念堂」は特定の個人や地域に対してだけではなく、東日本大震災の被害にあった全ての人や地域への慰霊と祈念を行える場所として考えた。またグローバル化が進んでいる現在においても、地域の特産物を利用して建築物にすることで、古くから形作られ継承されてきた風景を、異なった視点で残していくことができる。さらにその地域、その場所に適した工法や材料を活用すると地域産業の復興と再発見になると考える。
創意工夫
石巻は大震災の被害が非常に大きかっただけでなく、被害があった全域の中で地理的に中心地に当たる。そのため石巻だけでなく、被害地域全域に対して祈ることができるように形状自体で方角を指し示すようにした。平面形状は円形で北端は久慈、南西端は名取とし約210°の扇型としている。また玄昌石を死者・行方不明者数と同じ1万8千枚以上使うことで被害の大きさを表した。元々石巻の玄昌石は硯や屋根材として使われていたが、地元産業が震災で壊滅的な被害を受けており、この祈念堂で活用する事で地域復興の手掛かりにもしたいと考えた。しかし現在新たな採掘が再開しておらず入手が困難だったため、既存建物の解体で生じる廃棄物を再利用することで実現した。屋根の解体後選別し、状態が良い物は屋根のスレート葺き、状態が悪い物は壁の小端積みとし貴重な材料を最大限有効利用した。地産材料の活かすことで、この場所にしかない建築の形を考えた。
仕様
◆敷地条件:市街化調整区域◆建築用途:祈念堂◆地上1階建積石造+石造◆建築面積6.47㎡
評価コメント
石巻市の高台に設置された東日本大震災の死者・行方不明者に対する慰霊の場である。復興の遅れに伴い、本格的な慰霊施設がなかなか着手されない一方、洗練されたとは言い難い造形の慰霊オブジェが増えているなかで、小規模ながらデザインされた事例が登場した。全体は扇形である。石巻特産の玄昌石を積層し、その数が被害者数を示し、また上面に被災した各地の方角を刻み、思いを馳せることができる。石巻という場所性と東日本大震災の全体性を意識したデザインと言える。



